密林の罠

別にジャングルに旅立つわけでもRPGをしているわけでもなくて、某通販サイトでうっかり『王の帰還』とあとマイナーなラジドラCDを注文してしまったというだけです。本屋などの取り寄せと違って、配送が早いのがありがたい限り。だいたい24時間以内発送商品の場合、夜中に注文出して翌々日には着きます。うふ、昨日の夜注文したから、明日が楽しみ〜♪というわけです。でも一万円ちょっとの出費はあとで泣きを見ることでしょう。カードの請求は一ヶ月ぐらいタイムラグがあるから怖いんだよなあ。
さて今日の一冊はこちら⇒

豆腐小僧双六道中ふりだし

豆腐小僧双六道中ふりだし


そう、先日うっかり借りてしまった京極さんの本です。あいかわらず三センチぐらいの厚みを誇っています。そしてやっぱり妖怪マニア健在。マニアというと俗っぽいですが、俗っぽく見せかけてするする読めるのに、中身は『妖怪』に対する学問的な分析に満ち溢れているところが憎い。さらに物語としてもお約束なカタストロフをもっているところがすごい。最終章の収束の仕方には大喝采です。
そしてまた、ユーモアが素晴らしい。神社仏閣神仏権現の来歴や、「妖怪」という概念の変遷や特質に明晰な分析を加えながら、それをするりと現代の時事用語に変換して「つまり構造改革ということだな!」「この時代にそんなもんがあるかい!(つっこみつき)」みたいなことで説明してくれます。他にも、「秋葉原」という場所には古来より神的なうんぬんとクソ真面目に語りながら、「まあ今も聖地と呼ばれておりますけれど」みたいなことをさらっと書かれるとこう、なんというのでしょう、ヒザをうって喜びたくなりますというか。この一文てきっとわからん人には全然わっかんないんだろうなあ…ククククみたいな楽しさです(暗ッ)裏を返せば、カノ有名なダンテの「神曲」(これには、この○○という人物は、当時の腐敗政治家たちや有名人を風刺してるって言う注釈がいっぱい入ってます)や源氏物語といった古典の素晴らしい作品に書かれている時事ネタというのは、現代の私たちは頭で理解してもその当時生きている人の感覚とは到底似ても似つかない認識でその言葉を受け取るわけです。それをしみじみ感じました。言い換えれば、この本と同時代を生きられる喜びみたいなものも提供してくれるわけで。アキバという町への、なんともいえないこの胡乱なニュアンスよフフフ。
そんなユーモアもある一方、丁重で滑らかな地の文からのキャラへの容赦ないツッコミ、
『―馬鹿でございます。(地の文)』
とか、もーたまりません。くけけけ。この間と言うか、テンポ。そんなわけで読書の楽しさを存分に味わうことの出来る本なわけです。
あ、それから、この本は「豆腐小僧」という妖怪が出てくるわけなんですが、きっと京極さんはこの「豆腐小僧」という妖怪を分析していった結果、その成果を語るためにこんな文章を書いたのではないかしらと思いました。つまり、民俗学者が『「豆腐小僧」という妖怪の性質分析』という論文を書くところ、彼はこんな小説をひねりだしたわけではないかと。こういうところにマニアさを感じます。研究者肌というか。自分が興味を持って調べたこと、すなわちこれネタなわけですが、これをまた上手いこと私たちにも分けてくれる。論文ではなく小説で描くというのは言ってみれば基督が説教をするのにたとえ話を多く用いたとかそんなような行為なわけです。で、その説明だけに終始しているかと思えば物語作品としても満足度が高いという。直接言うだけが相手に伝達する手段じゃない、このノベルズという表現形式をこれだけ上手く行使してテーマを伝達できるのは並みの手腕じゃないと、まあ凡才はうらやましく思うわけでございます。

Σうわ長っ、この感想。